【W杯】日本勝たせた進化したVAR、ボール内蔵チップで1ミリ以下まで驚異の計測 開発者証言
[2022年12月2日12時1分]
<FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会:日本2-1スペイン>◇1次リーグE組◇1日◇ドーハ・ハリファ国際競技場
ゴールラインを割った? 割ってない?
サッカーのW杯(ワールドカップ)の1次リーグE組最終戦、日本-スペイン戦の決勝ゴールにつながった三笘薫(ブライトン)の折り返し。一見するとボールがラインを出たように見えた場面で、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)での確認が入った。
結果はボールがラインに触れていると判定され、「インゴール」。田中碧(デュッセルドルフ)が押し込んだ得点は認められ、日本の勝利につながった。
今大会も、オフサイド判定も含めて戦況を左右してきたVAR。その技術を支える公式球に埋め込まれたセンサーチップ機能を開発したのが、12年にドイツで創業したキネクソン社だ。日本独占ライセンスパートーナー契約を結ぶ株式会社スポヲタの家徳悠介代表取締役と、アドル・ビタラフ・セールスマネジャーに聞いた。【取材・構成=阿部健吾】
◇ ◇ ◇
-日本の得点シーンでどのような技術が生かされたのが教えてください。
ビタラフ氏:2つの技術が使われています。1つがキネクソンが開発したチップを使ったトラッキングシステムです。公式球の中に埋め込まれており、正確にボールの位置を測定できます。もう1つは他社製の「ホークアイ」と呼ばれる技術で、テニスなどでも使用されています。会場に設置されたカメラによって、映像で判断するシステムですね。
-ひと言で「VAR」と言っても、技術が補完し合っているわけですね。
ビタラフ氏:そうです。前回大会は「ホークアイ」だけでしたが、今大会はキネクソンが開発した技術が使われています。
-具体的にどのようにチップで測定していますか。
ビタラフ氏:チップは「IMU=慣性計測ユニット」と言います。加速度センサー、角速度(ジャイロ)センサーを搭載し、3次元の慣性運動、並進運動、回転運動を検出できます。他競技ではバスケットボール、ハンドボールなどでも活用されており、さまざまな運動データから選手の競技パフォーマンスや身体負荷のモニタリングが可能となっています。
今回のゴールラインの判定に関しては、観客席の最前列前の外周に張り巡らせたアンテナとの連動で計測をしています。フィールドをマッピングしていることで、(直系約22センチの)ボールが(最大12センチの)ラインを割ったかどうか、割ってない場合はコンマ何ミリの単位でラインにかかっているかを測定できます。あの場面でも、ミリ単位での数字が出ているでしょう。
-三笘選手は「1ミリでも」とコメントしていましたが、実際に1ミリ以下で計れるのですね。
家徳氏:その通りです。今大会はキネクソンのチップとホークアイの技術が融合されたことにより、より正確に、より早くVARの判定が行えます。前回大会は映像を見る時間、どうしても人為的になってしまう部分が課題として残りました。今大会ではキネクソンの技術を使用したことで、映像だけでは判断に時間を要するような場面でも、迅速に対応できるようになりました。
-もしキネクソンの技術がなければ、ボールが出たと判断されていた可能性もありますか。
家徳氏:一概には言えませんが、可能性はあったと思います。欧州ではすでにブンデスリーガなどでこの技術が導入されています。スペインのルイス・エンリケ監督が「VARを信頼している」と言っていました。欧州ではすでに技術的な浸透が進んでいる事も影響しているのかなと思います。
-チップを内蔵することで球の変化などに影響はでませんか。
ビタラフ氏:FIFAのパートナーに選ばれてからテストを行ってきました。ブラインドテスト、チップが内蔵されているかどうかを知らせないで選手にプレーしてもらうなど、何度も演習をしてきました。「どっちに入っているかわからない」という意見があるなど、有無による違いはないと考えています。
-試合前にチップが充電されている写真も話題となりました。
ビタラフ氏:そうですね。チップはワイヤレス充電されます。1試合ではボールの入れ替えも考えて、最低20個以上はチップ内蔵球を用意しています。
-あらためて今回注目が集まったことについて教えてください。
家徳氏:扱ってきた技術が日本の勝利に貢献出来たと思うと本当にありがたいです。日本の勝利に、一切の疑問を挟むことなく喜べるのは、本当にうれしいです。
ビタラフ氏:この技術はデータを可視化することによって、選手のパフォーマンス向上や身体的な健康を保つこともビジョンとして持っています。日本代表の活躍とともに、広くみなさんに知って頂けたら本望です。
【W杯】日本勝たせた進化したVAR、ボール内蔵チップで1ミリ以下まで驚異の計測 開発者証言 - カタール2022 : 日刊スポーツ
【W杯】勝ったぞ!森保ジャパン 強豪スペイン破り2大会連続決勝トーナメント進出/ライブ詳細
<FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会:日本2-1スペイン>◇1次リーグE組◇2日◇ハリファ国際競技場
ドーハの歓喜再び! 日本(FIFAランキング24位)が強豪スペイン(同7位)を2-1で破り、E組1位で2大会連続の決勝トーナメント(16強)進出を決めた。後半にMF堂安律(フライブルク)、田中碧(デュッセルドルフ)が得点し、逆転勝ち。2勝1敗の勝ち点6とし、ドイツ―コスタリカ戦の結果に関係なく突破を決めた。8強を目標とする日本は、1回戦(日本時間6日午前0時開始)ではF組2位のクロアチアと対戦する。
- スペインを破り歓喜する日本代表(ロイター)
- 日本対スペイン スペインに勝利し、ガッツポーズを見せる森保一監督(撮影・江口和貴)
日 本 | 2 | 0-1 2-0 |
1 | スペイン |
▼得点者
前半11分 【ス】モラタ
後半3分 【日】堂安
後半6分 【日】田中
ドイツ | 4 | 1-0 3-2 |
2 | コスタリカ |
◆日本-スペイン試合経過
◆後半53分 日本2-1スペイン
後半終了
- スペインを破り歓喜する吉田(ロイター)
- 日本対スペイン 後半、勝ち越しゴールを決めた田中をもみくちゃにして祝福する日本イレブン(撮影・横山健太)
- スペインを破り歓喜する日本代表(ロイター)
◆後半45分 日本2-1スペイン
アディショナルタイムは7分
◆後半45分 日本2-1スペイン
【スペイン】 PA内に侵入したオルモが滑り込みながらもシュートを放つもGK正面でキャッチ
◆後半44分 日本2-1スペイン
【スペイン】 エリア左手前でクロスボールを受けたアルバが強烈ミドルを放つもDFがブロック
◆後半42分 日本2-1スペイン
【日本】 【選手交代】田中→遠藤
◆後半38分 日本2-1スペイン
【日本】 敵陣左サイドで得たFK、堂安が中央にボールを上げると谷口が頭で合わせるもGK正面でキャッチされる
◆後半33分 日本2-1スペイン
【スペイン】 ボールをキープして左サイドからクロスを送るもDFにはじかれる
◆後半25分 日本2-1スペイン
【日本】 左サイドをドリブルで突破する三笘。敵陣を切り裂きサイドからクロスを送るも、浅野とはわずかに合わず
◆後半23分 日本2-1スペイン
【日本】 【選手交代】鎌田→冨安
◆後半23分 日本2-1スペイン
【スペイン】 【選手交代】バルデ、ガビ→アルバ、ファティ
◆後半16分 日本2-1スペイン
【日本】 【選手交代】前田→浅野
◆後半12分 日本2-1スペイン
【スペイン】 【選手交代】モラタ、ウィリアムス→アセンシオ、F・トレス
田中が逆転弾!
◆後半6分 日本2-1スペイン
【日本】 ゴールラインギリギリで三笘が中央にボールを上げると、詰めていた田中が体で押し込み逆転に成功!
- 日本対スペイン 後半、勝ち越しゴールを決める田中(撮影・横山健太)
- 日本対スペイン 後半、勝ち越しゴールを決めた田中をもみくちゃにして祝福する日本イレブン(撮影・横山健太)
堂安が同点弾!
◆後半3分 日本1-1スペイン
【日本】 エリア右手前でこぼれ球を拾った堂安が左足の強烈なミドル。ボールはGKの手をはじきながらゴールネットに突き刺さった
- ゴールを決め歓喜の堂安(ロイター)
- 日本対スペイン 左足で同点ゴールを決める堂安(撮影・横山健太)
◆後半1分 日本0-1スペイン
【スペイン】 【選手交代】アスピリクエタ→カルバハル
◆後半1分 日本0-1スペイン
【日本】 【選手交代】長友、久保→三笘、堂安
◆後半1分 日本0-1スペイン
日本のボールで後半開始
■■■■ハーフタイム■■■■
◆前半47分 日本0-1スペイン
前半終了
◆前半45分 日本0-1スペイン
アディショナルタイムは1分
◆前半44分 日本0-1スペイン
【日本】 谷口にイエローカード■
◆前半42分 日本0-1スペイン
【スペイン】 エリア手前でボールをもらったオルモがシュートを放つも、DFが体をはったブロック
◆前半27分 日本0-1スペイン
【日本】 前田らが前線からプレッシャーをかけるもボールを奪えず
◆前半25分 日本0-1スペイン
【スペイン】 モラタが裏を狙い日本ゴール前に詰め寄るもオフサイド
◆前半9分 日本0-0スペイン
【スペイン】 左CKから中央のモラタが頭で合わせるもGKの正面がキャッチ
◆前半5分 日本0-0スペイン
【日本】 前線高い位置でボールを奪った前田が、右サイドを走る久保にパス。久保はラインギリギリまで攻め上がりクロスを上げるも、シュートまで持ち込めず
◆前半2分 日本0-0スペイン
【スペイン】 右サイドからのクロスは味方には合わず
◆前半1分 日本0-0スペイン
スペインのボールで試合開始
スタメン
◆日本スタメン◆
【GK】権田修一
【MF】田中碧、守田英正、鎌田大地、伊東純也、久保建英
【FW】前田大然
◆日本ベンチ◆
【GK】川島永嗣、シュミット・ダニエル
【DF】冨安健洋、酒井宏樹、伊藤洋輝、山根視来
日本とスペインの戦力比較表
日本代表メンバー
日本突破の条件
久保建英スペイン代表相関図
- 【イラスト】久保建英を巡るスペイン代表相関図
【W杯】勝ったぞ!森保ジャパン 強豪スペイン破り2大会連続決勝トーナメント進出/ライブ詳細 - カタール2022ライブ速報 : 日刊スポーツ
強豪国の「ずるさ」VARが排除 愚直な日本などアジア勢に追い風 サッカー世界地図に変化が
2022年12月3日21時34分
韓国がポルトガルを破って、決勝トーナメントに滑り込んだ。1-1で迎えた後半ロスタイムにFW孫興民が超絶スルーパス。2-1と逆転勝ちし、ウルグアイを総得点で上回って12年ぶりの1次突破を決めた。
ポルトガルとは02年日韓大会以来の対戦だった。同じく1次リーグ最終戦で1-0と勝利したが、相手2選手が退場。誤審が相次いだイタリア、スペイン戦とともに「疑惑の試合」にあげられた。しかし、今回はVARの監視下で文句なく「ちゃんと」勝った。
これで、決勝トーナメント進出のアジア勢は過去最多の3チーム。ウルグアイ敗退でブラジルとアルゼンチンだけになった南米勢を上回った。欧州と南米が中心だった世界のサッカー地図が変わってきた。
アジア躍進の陰に「テクノロジー」あり、は言い過ぎだろうか。前回大会から導入されたVAR、今大会はより精巧になり、半自動オフサイド判定システムも加わった。これが欧州や南米の勢いをそいでいる。
「公平なのだから、どっちもどっち」と突っ込まれそうだが、ここまでは「弱者」が有利に思える。日本戦でのドイツの2点目やサウジアラビア戦でのアルゼンチンの2点目は、いずれもオフサイドで取り消し。入っていれば、流れは変わった。スペイン戦の三笘の1ミリが認められたのも機械の力。VARが勝敗に影響を与えた試合は多い。
主審の判断は、どうしても「強者」に傾く。「ドイツは最後に勝つ」「これを決めるのがアルゼンチン」…。潜在意識が時に公平さを失わせる。かつてプロ野球には「王ボール」があった。「大打者が見逃すのだからボール」と判定。無意識のうちに下す「強者」有利の判断は否定できない。
強豪国には「審判の判断を狂わすのも技術」とする考えもある。言葉は悪いが審判を「欺く」ことが容認される。「ずるをしてもOK」「見つからなければいい」と。アルゼンチンMFマラドーナの「神の手」はその最高峰。世界的には明らかなハンドも、同国内では称賛されるという。
日本選手には「マリーシア(ずるさ、狡猾さ)がない」と言われる。世界で勝てない理由にもされた。確かに駆け引きなど足りない部分もあるが、それでも日本は正々堂々と戦うことをやめなかった。育成年代から「ずるはダメ」と指導するのが日本サッカー。少年からJリーグ、代表まで、ぶれずに続けてきた。
VARは審判の判断を助けるとともに、審判の目を盗む「ずるさ」を厳しく排除する。それが、日本などアジア勢の躍進につながった。ドイツ、スペイン戦の勝利は、日本が愚直にルールを守り、まじめにサッカーに取り組んできたことへの「ご褒美」でもある。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)
- 日本対スペイン 後半、VARのチェック後、ゴールが認められ、歓喜する田中(左から2人目)。左端は長友(2022年12月1日撮影)
強豪国の「ずるさ」VARが排除 愚直な日本などアジア勢に追い風 サッカー世界地図に変化が - OGGIの毎日がW杯 - ワールドカップカタール2022コラム : 日刊スポーツ